2015年2月18日水曜日

「身を切る改革」にならない定数削減

  17日の本会議で、議員提出議案である「市議会議員の定数削減」の議案が、12人の傍聴者が注目するなかで可決してしまいました。次の選挙からは、現在の定数22名から1名減の21名の定数で行われることになります。
 芦屋市9万人台の平均定数は、24人。決して多くはない数なのに。
「身を切る改革」なんていうけど、決まった定数ではいる議員は「身を切られる」ことにはならないでしょう。
 賛成討論された議員の意見は、個々の議員の質を上げればいい、議員の姿勢次第。削減されても民意は反映できるということでしたが、多様な民意の中で、1人の議員が手の上げ下げで示せる民意は1つです。1つ減らせば、その1つの民意は反映されないのでは。
新年度議案には、議員報酬56万円を59.1万円にあげる議案が出されていていますが、議員の報酬が高いという市民の民意を今度はどのように判断されるのか。
 始まったばかりの議会は、3月23日まで。かなりハードな議案が続きます。

団を代表して、反対討論したので、載せます。

議員提出議案第25号 芦屋市議会議員定数条例の一部を改正する条例の制定について、
日本共産党を代表して反対の立場から討論します。

議員の定数削減については、昨年12月議会で継続審議になって以降わずか5回の委員会の審議で、十分な審議を尽くすことなく、また議会改革で確認されたように合意を得ていないものは保留するということにも反して、多数決で決められようとしています。先の総務委員会では、議会改革で決めた専門家や参考人の意見を聞く場を初めて設けましたが、専門家からの意見は、唯一削減反対の立場から南山大学榊原教授から意見書が出されただけでした。定数削減という意見が二分する課題については、削減を提出された側が専門的意見を出すべきであり、またパブリックコメントなどで、市民の多様な意見に耳を傾け、共に丁寧な議論を重ねることが必要だと思います。しかし、委員会審査の途中で審議打ち切りの動議が出され、議論をし尽くしたとは言えない段階で結論を出さなければならないことについては、豊かでしっかりとした議論ができる議会を目指すとした議会基本条例の精神にも反します。
 では、次の5つの理由で反対をします。

一つ目には、「外形性」についての市民的議論がない
 定数1を減らす意味について尋ねると、従来の「経費削減」と違い、『「外形性」を整えるため』というのがその理由でした。具体的には、3つの常任委員会に7人ずつの委員で合計21人となり『外形性』すなわち形が整うので、現在の定数22名より1名減らすというもの。しかし、3委員会に7人、7人、7人がいいという理由の定数削減の議論は、これまで市民の中では全くされていません。

二つ目には、削減の「必要性」がない
 現在の22名の定数で、削減案より1名多いことによる議会運営上の支障があるわけでもなく、削減に必要性は全くありません。今でさえ、人口9万人台の芦屋と同規模の市の議員の定数の平均24名より2名も少ないのです。昨年11月に市議会として行った3回の議会報告会でも参加した市民からは1人として議員削減の意見は出ていません。
委員会の討論では、「多くの市民の声を受けて提出した」「民意である」という賛成意見がありましたが、南山大学榊原教授は、これに関連して次のように述べています。「議員定数を削減・減少させる世論の支持といった理由をあげられることもある。しかし、世論調査によって住民世論を把握しているケースは少ないようであり、本当に支持があるのか、仮に支持があるとして、何故世論の支持があるかは必ずしも明確ではない。また、住民の意見を反映することは重要であるが、「根拠なき削減論」である世論におされ、選挙での支持を得るためには議員定数削減を支持したほうが有利と考える場合、議員にも同意されるようである。議会・議員一般が機能していないという評価が背景にあるのかもしれないが、問題は機能していないから無駄と考えるか、機能していないのであれば、議会基本条例を制定・運用することなどによって、機能するようにするかである。さらに、減少した議員数でも議会が運営できるから弊害が生じないような印象を与えるが、住民の要望を十分反映せず、「批判監視能力が確実にていかする」といった批判も実務関係者から出されている」この実務関係者というのは、全国議長会で長年重要な役職にあって野村稔氏のコメントであることも紹介しておきます。

三つ目には、削減提案の「合理性」がない
 現在の定数では、3つの委員会のうち一つの委員会が8名となり、採決で「可否同数」となれば、委員長が行使する「裁決権」(可か否かを決める権限)の機会が少ないことが「外形性」を整える理由だと提出議員は説明されました。しかし、21名にすると、本会議の採決の際に、採決に加わらずに議会運営に専念すべき議長が、「裁決」しなければならなくなる「可否同数」の場合、すなわち1010の可能性が増えるという矛盾があります。
 「外形性」を問題にするのであれば、本会議で「表決権(賛否を表明する権利)」のない議長が、委員会では「表決」に加わるという矛盾を解消することこそ先決ではないでしょうか。そのためには、他市のように、議長が委員会には所属しないことにすれば解決します。また、委員会は三つとも7名で「外形性」も整います。そもそも「外形性」を理由にした議員削減には、「合理性」がないのです。

 定数削減派の議員は「身を切る」改革だとも説明しますが、定数内で当選した議員には何の痛みも伴わず「身を切る」ことにはなりません。削減され「身を切られる」のは、『民意』市民の声や願いであり、主権者である市民の「被選挙権」です。「身を切る」という説明にも「合理性」はありません。
 市民参考人の副島氏は、『「住民自治」こそ地方自治の根本だと話されました。代議制民主主義の名のとおり、議員は地方自治の主体者である市民の多様な意見を代表して、市政の大事な問題を決める権限を持っている。芦屋市は、地方自治法制定直後は「有権者629人に1人の市議会議員」だったが、今や「3585人に1人」。これをさらに「3756人に1人」に減らす意味はない。議員は無駄という市民がいるとしたら、「市会議員の存在が遠く感じられる」ことがあるからで、これに積極的にこたえることこそが議会改革の柱である』と指摘されました。

四つ目には、削減しても「メリット」がない
 22名から21名に削減することで、「議会機能は低下する」「メリットはない」ことは、提出議員も認めているところです。
参考人の大野氏は、定数の削減は議会の機能低下に直結すると指摘されました。ご自身が職員として30数年働いてこられた経験から、約1,000人の公務従事者、専門家が行う行政の内容を議員がチェックするためには専門知識が必要であると。これまで30の定数を22まで削減し、四つの常任委員会を三つにへらしてきたが、いま介護、子育て新制度など国が目まぐるしく変化している中でチェックし、住民の声を反映できるのか心配であると。こうなるのも定数を減らしたからであり、むしろ4つの委員会を3つに減らし負担を重くしたのを元に戻して、議員を増やすべきだと話されました。

メリットに関連しても提出議員からは、「あえていえば、議会が身を切ることで、行政当局に議会の姿勢を示して、行政改革を促す」旨の考えが示されました。榊原教授はこの点についても述べているので以下紹介します。「経費削減と世論の支持に関連した最近の議論の特徴と思われるのは、行政職員の削減・行政経費の削減の模範として、議員・議会も定数削減や議会経費を削減すべきとする議論の仕方である。しかし、地方行革としての議会定数の削減に対して、議会を行政と同列に扱うことに対する批判があったのと同時に、両者を同列に扱うことはできない。行政職員の場合、定数を削減しても仕事が存在する以上、安上がりの行政を達成するための手法として妥当かという問題はあるが、いわゆる非正規公務員や民間公務労働で代替する公選の代表がいないという重大な相違が存在する。」と。
議会経費がわずかでも削減になるという意見もありますが、今議会では議員の報酬引き上げ案も出ているので、今後議員審査において各議員の態度が問われますが、これと関連して、重ねて榊原教授の言葉を紹介しますと、「万が一議会経費を削減する必要性が存在するとしても、それを議員定数の減少に結びつけるのは短絡的に過ぎる。例えば、議員報酬額等も問題になるからである。岐阜県可児市の資料によれば、芦屋市は、類似の他の自治体と比較して、議員報酬等は低額とは言えない。もちろん、議員報酬額等については、別途検討が必要ではあるが、議員定数は議員報酬額等と比較しても、より重要な民主主義的価値にかかわっていると考えられ、議員報酬額等以上に、その減少には慎重な対応が求められる。」

五つ目は、何よりも「合意」がない
 「定数問題」を含む議会改革のテーマ38項目の中で、議会内の「合意」がなく多数決で決められようとしているのは、「定数問題」ただ一つです。議会基本条例は「議会活動の原則」として第2条に「合意を尊重した民主的な議会運営に努めること」と謳っています。提出議員が「削減は市民の声」といいますが、かつてのように「市民世論」といえるものはなく、「削減すべきではない」という声があり、削減に「市民的合意」は全くありません。

 最後にあらためて、榊原教授の定数1削減反対の意見書のなかでおさえておきたいところ紹介します。
「条例で議員定数を設定する際には、様々なことを考慮すべきであると思われるが、考慮事項は並列的なものではなく、民主主義的価値である多様性を最重視すべきである。人口9万人台で、議会基本条例を制定し、二元代表制の一方の柱である首長との緊張関係の下で、議会活動の活性化を図ろうとする芦屋市における地方議会の議員定数22人は、理論的にも他の自治体との比較においても少ないという認識から議論を始める必要があり、ましてや議員定数を1人減少させる提案には賛成できない。行政裁量に対する裁判所の審査と同様に、議員定数の設定は立法裁量であるとしても、いかなる要素をどのような比重で考慮したかをあきらかにしなければならない説明責任があり、議会経費の削減、議員の少数精鋭化、世論の支持や討議の適切性の保障を理由として議員定数を減少させる主張は、説得力をもたない。多様性の反映といった民主主義的価値を疎かにするならば、長期的な視野に立って考えたときには、得るものよりも失うものがはるかに大きい。制限選挙の下での明治時代の議員定数はともかく、戦後の早い段階の議員定数より少ない議員定数で、はたして住民の多様性が確保できるのか、民主主義が前進したと言えるのかを考えなければならない。」
 私は、この榊原先生の指摘を削減賛成の議員を含め、芦屋市議会として真剣に受け止めなければならないと思います。
そのことを申し上げて、日本共産党を代表して、議員定数削減に対する反対の討論とします。議員団を代表して、反対討論をしました。
 賛成討論された議員の意見は、個々の議員の質を上げればいい、議員の姿勢次第。削減されても民意は反映できるということでしたが、多様な民意のなかで1人の議員が手の上げ下げで示せる民意は一つです。削減された民意は、示されないのです。